日本という国は、歴史的に見ても、ご先祖様や家、家族、親族とのつながりを、とても大切にしてきた国ではないかと思います。
春と秋のお彼岸、そして七月または八月のお盆。お盆の時期は地域によって異なりますが、日本には昔から、折々にご先祖様を供養する習慣があります。
うろ覚えではありますが、お正月も、もともとはご先祖様と深く関わる行事であったと聞いたことがあります。
いずれにしても、日本人はご先祖様や家、家族、親族を大切にしてきた。このことは言えるのではないでしょうか。
では、なぜ大切にしてきたのでしょう。
それは、ご先祖様から脈々と受け継がれてきた、血縁によるつながりを重んじていたからではないでしょうか。
日本は、長く農耕を営んできた国です。今よりも技術がはるかに未発達であった時代、農作業という重労働には、多くの人手が必要だったことでしょう。また、農耕をする土地は、一族にとって大切な財産でもあったはずです。
「一所懸命」という言葉は、もともと一つの土地を命がけで守るという意味から生まれたといわれます。人々は家族や一族で助け合いながら、自分たちの暮らしと土地を守ってきたのでしょう。
こうした背景のなかで、日本には、ご先祖様や家族、親族を大切にする風習が根づいていったのではないでしょうか。
さて、このような流れを踏まえて現代の日本を見ると、少し様子が変わってきたように思えます。皆様は、どのように感じていらっしゃるでしょうか。
核家族化が進み、親族との付き合いがほとんどないという家庭も増えました。また、葬儀をはじめとする、亡くなった方を弔う行事も簡素になりつつあります。昔のように、一族が日常的に助け合うことも少なくなりました。
現代の日本は、そのような流れのなかにあります。
「昔とは暮らし方が違うのだから、変わっていくのは当然だ」という意見もあるでしょう。一方で、こうした変化を由々しきことだと感じる方もいらっしゃるでしょう。どちらがよいのか、一概には判断できない問題だと思います。
しかし、ご先祖様がいらっしゃったからこそ、今の自分が生まれ、ここに生きているという事実は変わりません。なかには、ご先祖様が働き、築き、守ってきたものを受け継いでいる方もいらっしゃるでしょう。
時代や暮らし方が変わっても、ご先祖様とのつながりがなくなることはありません。
そう考えると、先祖供養は大切なことだと思うのです。そして、受け継いでいきたい、よい風習だと思うのです。
人生には、さまざまなことがあります。けれども、ご先祖様がいらっしゃったからこそ、私たちはこの人生を得ています。
「人生」というものについては、それぞれに思うところがあるでしょう。しかし、喜んだり、悩んだり、人生について考えたりすることができるのも、命をいただき、人生が始まったからこそです。そして、その命はご先祖様から受け継がれてきたものです。
以前、ある方から、
「嫌だと思えるのは、『良い』というものを知っているからだ」
と言われたことがあります。そして、「良い」というものを知っているのなら、そこへ近づけるように考え、行動していけばよいのだ、と教えていただきました。
人生については、人それぞれにさまざまな思いがあるでしょう。それでも、命をいただけたのは、ご先祖様がいらっしゃったからこそです。今、こうして生きているのも、ご先祖様あってのことです。
そのことだけでも、先祖供養をする十分な意味があるのではないでしょうか。
まもなく8月のお盆を迎えます。
ご先祖様への感謝とご報恩の気持ちを込めて、静かに手を合わせてまいりたいものです。