書き下し文
爾(そ)の時(とき)に他方(たほう)の国土(こくど)の諸(もろもろ)の来(きた)れる菩薩摩訶薩(ぼさつまかさつ)の八恒河沙(はちごうがしゃ)の数(かず)に過(す)ぎたる、大衆(だいしゅう)の中(なか)に於(おい)て起立(きりゅう)し合掌(がっしょう)し礼(らい)を作(な)して、仏(ほとけ)に白(もう)して言(もう)さく、
世尊(せそん)、若(も)し我等(われら)、仏の滅後(めつご)に於て此(こ)の娑婆世界(しゃばせかい)に在(あ)って、勤加精進(ごんかしょうじん)して是(こ)の経典(きょうてん)を護持(ごじ)し読誦(どくじゅ)し書写(しょしゃ)し供養(くよう)せんことを聴(ゆる)したまわば、当(まさ)に此の土(ど)に於て広(ひろ)く之(これ)を説(と)きたてまつるべし。
爾の時に仏、諸の菩薩摩訶薩衆に告(つ)げたまわく、
止(や)みね、善男子(ぜんなんし)、汝等(なんだち)が此の経を護持せんことを須(もち)いじ。所以(ゆえ)は何(いか)ん。我(わ)が娑婆世界に自(おの)ずから六万恒河沙等(ろくまんごうがしゃとう)の菩薩摩訶薩あり。一々(いちいち)の菩薩に各(おのおの)六万恒河沙の眷属(けんぞく)あり。是の諸人等(しょにんら)、能(よ)く我が滅後に於て、護持し読誦し広く此の経を説かん。
仏、是れを説きたもう時、娑婆世界の三千大千(さんぜんだいせん)の国土(こくど)、地(じ)、皆(みな)、震裂(しんどう)して、其(そ)の中より無量千万億(むりょうせんまんおく)の菩薩摩訶薩あって同時(どうじ)に涌出(ゆじゅつ)せり。是の諸の菩薩は身(み)皆(みな)金色(こんじき)にして、三十二相(さんじゅうにそう)・無量の光明(こうみょう)あり。先(むかし)より尽(ことごと)く娑婆世界の下(しも)、此の界(かい)の虚空(こくう)の中に在って住(じゅう)せり。