是の如く苦言すらく。汝、当に勤作すべし。又、以て軟語(なんご)すらく。若(もし)我が子の如くせん。
長者、智を有(も)って漸(ようや)く入出せしむ。二十年を経て家事を執作せしめ、其れに金・銀・真珠・頗梨(はり)、諸物の出入を示して、皆知らしむれども猶(なお)門外に処し草庵に止宿して、自ら貧事を念う。我に此の物無しと。
父、子の心、漸く已に曠大(こうだい)なるを知って財物を与えんと欲して、即ち親族・国王・大臣・刹利・居士を聚(あつ)めて、此の大衆に於て説く。是れ我が子なり。我を捨てて佗行(たぎょう)して五十歳を経たり。
子を見てより来(このかた)、已(すで)に二十年、昔、某の城に於て是の子を失いき。周行(しゅうぎょう)し求索(ぐしゃく)して遂に此に来至せり。凡(およ)そ我が所有(しょう)の舎宅(しゃたく)・人民、悉く以て之に付す。其の所用を恣(ほしいまま)にすべしと。
子念(こおも)わく、昔は貧しくして志意下劣なりき。今は父の所に於て大に珍宝、並及(ならび)に舎宅、一切の財物を獲たりと。甚だ大に歓喜して未曽有なることを得るが如し。