信解品第四

時に窮子、自ら念わく、罪なくして囚執(とら)えらる。此れ必定(ひつじょう)して死せん。転(うた)た更(さら)に惶怖(おうふ)し、悶絶(もんぜつ)して地に躃(たお)る。

父、遥かに之を見て使(つかい)に語って言わく、此の人を須(もち)いじ。強(しい)て将(ひき)いて来ること勿(なか)れ。冷水を以て面(かお)に灑いで醒悟(しょうご)することを得せしめよ。復、与(く)みし語ることなかれ。所以は何ん、。其の子の志意(こころね)下劣(げれつ)なるを知り、自ら豪貴(ごうき)にして子の為に難(はば)からるるを知って、審(あきら)かに是れ子なりと知れども、而も方便を以て佗人に語って是れ我が子なりと云わず。使者、之(ぐうし)に語らく、我、今、汝を放(ゆる)す。意(こころ)の所趣(しょしゅ)に隨(したが)え。窮子、歓喜して未曽有なることを得て、地より起きて貧里に往至して、以て衣食を求む。

爾の時に長者、将に其の子を誘引せんと欲して、方便を設けて、密かに二人の形色憔悴(ぎょうしきしょうすい)して威徳(いとく)なき者を遣(つか)わす。汝、彼(かしこ)に詣(ゆ)いて徐(ようや)く窮子に語るべし。此に作処(さしょ)あり。倍(ま)して汝に直(あたい)を与えん。窮子、若し許さば、将(ひき)い来(きた)りて作(な)さしめよ。若し何の所作をか欲すと言わば、便ち之に語るべし。汝を雇うことは糞(あくた)を除(はら)わしめんとなり。我等二人、亦、汝と共に作さんと。時に二(ふた)りの使人即ち窮子を求むるに、既已(すで)に之を得て具(つぶ)さに上の事を陳(の)ぶ。

爾の時に窮子、先(ま)ず其の値を取って、尋(つ)いで与(とも)に糞(あくた)を除(はら)う。