化城喩品第七

是の時に疲極の衆、心大に歓喜して未曽有なりと歎ず。我等、今者(いま)斯の悪道を免(まのが)れて快く安穏なることを得つ。是(ここ)に衆人前(しゅにんすす)んで化城(けじょう)に入って、已度(いど)の想を生じ安穏の想を生ず。

爾の時に導師、此の人衆の既(すで)に止息(しそく)することを得て、復(また)疲倦無(ひけんな)きを知って、即ち化城を滅(めっ)して衆人に語って、汝等去来(なんだち、もうすぐだ!)、宝所(しんのたからのありか)は近きに在り。向(こ)の大城は我が化作する所なり。(あなたたちを)止息させんが為のみと言わんが如し。

諸の比丘、如来も亦復是の如し。今、汝等が為に大導師と作って諸の生死(しょうじ)・煩悩の悪道の険難長遠(けんなんじょうおん)にして去(さ)るべく度(ど)すべきを知れり。若し衆生、但一仏乗(ただいちぶつじょう)を聞かば、則ち仏を見んと欲せず、親近(しんごん)せんと欲せじ。便ち是の念を作さん。仏道は長遠なり。久しく勤苦(ごんく)を受けて乃(いま)し成ずることを得べしと。

仏、是の心の怯弱下劣(こうにゃくげれつ)なるを知(しろ)しめして、方便力を以て中道(ちゅうどう)に於て止息せんが為の故に二涅槃を説く。若し衆生、二地(にじ)に住すれば、如来、爾の時に即ち為に説く。汝等は所作未(しょさいま)だ弁(べん)ぜず。汝が所住の地は仏慧に近し。当に観察し籌量(ちゅうりょう)すべし。所得の涅槃は真実に非ず。但(ただ)是れ如来方便の力をもって一仏乗に於て分別して三と説く。彼の導師の止息せんが為の故に大城を化作し、既に息(やす)み已(おわ)んぬと知って、之に告げて、宝所は近きに在り。此の城は実に非ず。我が化作(けさ)ならくのみと言わんが如し。