虚空の諸天、法を聴かんが為の故に亦(また)常に隨侍(ずいじ)せん。若し聚落(じゅらく)・城邑(じょうおう)・空閑(くうげん)・林中(りんちゅう)に在(あ)らんとき、人あり来って難問せんと欲せば、諸天、昼夜(ちゅうや)に常に法の為の故に而も之を衛護(えご)し、能く聴者(ちょうしゃ)をして皆(みな)歓喜することを得せしめん。所以は何ん。此の経は是れ一切の過去・未来・現在の諸仏の神力をもって護(まも)りたもう所なるが故に。
文殊師利、是の法華経は無量の国の中に於て、乃至(ないし)名字(みょうじ)をも聞くことを得べからず。何(いか)に況(いわ)んや見ることを得、護持し読誦せんをや。
文殊師利、譬(たと)えば強力(ごうりき)の転輪聖王(てんりんじょうおう)の威勢(いせい)を以(もっ)て諸国を降伏(ごうぶく)せんと欲せんに、而も諸の小王(しょうおう)、其の命(めい)に順(したが)わざらん。時に転輪王、種々の兵を起して往(ゆ)いて討伐(とうばつ)するに、王、兵衆(ひょうしゅう)の戦うに功(こう)有る者を見て即ち大に歓喜し、功に隨って賞賜(しょうし)し、或は田宅(でんたく)・聚落・城邑を与(あた)え、或は衣服(えぶく)・厳身(ごんしん)の具(ぐ)を与え、或は種々の珍宝(ちんぽう)・金(こん)・銀(ごん)・瑠璃(るり)・硨磲(しゃこ)・碼碯(めのう)・珊瑚(さんご)・琥珀(こはく)・象馬(ぞうめ)・車乗(しゃじょう)・奴婢(ぬび)・人民(にんみん)を与う。
唯、髻中(けいちゅう)の明珠(みょうじゅ)のみを以て之を与えず。所以は何ん。独(ひとり)、王の頂上(ちょうじょう)に此の一つの珠(ひほう)あり。若し以て之を与えば、王の諸の眷属(けんぞく)必ず大に驚き怪(あやし)まんが如し。