文殊師利、如来も亦復是の如し。禅定・智慧の力を以て法の国土を得て三界(さんがい)に王たり。而るを諸の魔王、肯(あえ)て順伏(じゅんぷく)せず。如来の賢聖(けんじょう)の諸将(しょしょう)、之(これ)と共に戦うに其の功有る者には心(こころ)亦(また)歓喜して、四衆(ししゅ)の中に於て為(ため)に諸経(しょきょう)を説いて其の心をして悦(よろこ)ばしめ、賜(たま)うに禅定・解脱・無漏(むろ)・根(こん)・力(りき)の諸法の財(たから)を以てし、又復(またまた)涅槃(ねはん)の城(しろ)を賜与(しよ)して滅度を得たりと言って其の心を引導して皆歓喜せしむ。而も為に是の法華経を説かず。
文殊師利、転輪王(てんりんのう)の諸の兵衆の大功(だいこう)有る者を見ては、心、甚だ歓喜して此の難信(なんしん)の珠(たま)の久(ひさ)しく髻中に在って妄(みだ)りに人に与えざるを以て、今、之を与えんが如く、如来も亦復是の如し。
三界の中に於て大法王たり。法を以て一切衆生を教化す。賢聖の軍の五陰魔(ごおんま)・煩悩魔(ぼんのうま)・死魔(しま)と共に戦うに大功勲(だいこうくん)有って、三毒(さんどく)を滅(めっ)し三界を出でて魔網(まもう)を破(は)するを見ては、爾の時に如来、亦、大に歓喜して此の法華経の能く衆生をして一切智に至らしめ、一切世間に怨(あだ)多くして信じ難く、先に未だ説かざる所なるを、而も今、之を説く。
文殊師利、此の法華経は是れ諸の如来の第一の説、諸説(しょせつ)の中に於て最(もっと)も為(こ)れ甚深(じんじん)なり。末後に賜与すること、彼(か)の強力の王の久しく護れる明珠を、今、乃(すなわ)ち之を与うるが如し。