仏、文殊師利に告(つ)げてのたわく、
若(も)し菩薩摩訶薩、後の悪世に於て是の経を説かんと欲(ほっ)せば、当(まさ)に四法(しほう)に安住(あんじゅう)すべし。一(いち)には菩薩の行処(ぎょうしょ)・親近処(しんごんしょ)に安住して、能く衆生(しゅじょう)の為(ため)に是の経を演説(えんぜつ)すべし。
文殊師利、云何(いか)なるをか菩薩摩訶薩の行処と名(なづ)くる。若し菩薩摩訶薩、忍辱(にんにく)の地(じ)に住(じゅう)し、柔和善順(にゅうわぜんじゅん)にして卒暴(そつぼう)ならず、心(こころ)、亦(また)驚(おどろ)かず、又復(またまた)法(ほう)に於て行(ぎょう)ずる所(ところ)なくして、諸法如実(しょほうにょじつ)の相(そう)を観(かん)じ、亦、不分別(ふふんべつ)を行ぜざる。是れを菩薩摩訶薩の行処と名く。
云何なるをか菩薩摩訶薩の親近処と名くる。菩薩摩訶薩、国王(こくおう)・王子(おうじ)・大臣(だいじん)・官長(かんちょう)に親近せざれ。諸の外道(げどう)・梵志(ぼんし)・尼犍子等(にけんしとう)、及(およ)び世俗(せぞく)の文筆(もんしつ)・讃詠(さんよう)の外書(げしょ)を造(つく)る、及び路伽耶陀(ろかやだ)・逆路伽耶陀(ぎゃくろかやだ)の者(もの)に親近せざれ。亦、諸の有(あら)ゆる凶戯(くけ)の相扠相撲(そうしゃそうぼく)、及び那羅等(ならとう)の種々(しゅじゅ)変現(へんげん)の戯(たわむれ)に親近せざれ。又、旃陀羅(せんだら)、及び猪(ちょ)・羊(よう)・鶏(けい)・狗(く)を畜(やしな)い畋猟(でんりょう)・漁捕(ごぶ)する諸の悪律儀(あくりつぎ)に親近せざれ。