序品第一

我、彼の土の恒沙の菩薩、種々の因縁をもって仏道を求むるを見る。

或(ある)いは施(せ)を行ずるに金・銀・珊瑚・真珠・摩尼・硨磲・碼碯・金剛の諸珍(しょちん)、奴婢(ぬび)・車乗(しゃじょう)・宝飾(ほうじき)の輦輿(れんにょ)を歓喜して布施し、仏道に回向して是の乗の三界第一にして諸仏の歎めたもう所なるを得んと願う有り。

或いは菩薩の駟馬(しめ)の宝車(ほうしゃ)・欄楯華蓋(らんじゅんけがい)・軒飾(こんじき)を布施する有り。復、菩薩の身肉手足、及び妻子を施して無上道を求むるを見る。

又、菩薩の頭目身体(ずもくしんたい)を欣楽施与(ごんじきせよ)して仏の智慧を求むるを見る。

文殊師利、我、諸王の仏所に往詣して無上道を問いたてまつり、便(すなわ)ち楽土(らくど)・宮殿臣妾(くうでんじんしょう)を捨てて、鬚髪(しゅほつ)を鬀除(ていじょ)して法服を被(き)るを見る。

或いは菩薩の而(しか)も比丘と作って独(ひと)り閑静(げんしょ)に処(しょ)し、楽(ねが)って経典を誦するを見る。

又、菩薩の勇猛精進し、深山に入って仏道を思惟するを見る。

又、欲を離れ、常に空閑に処し深く禅定を修して五神通を得るを見る。

又、菩薩の禅に安(やすん)じて合掌し、千万の偈を以て諸法の王を讃めたてまつるを見る。

復、菩薩の智深く志固くして能(よ)く諸仏に問いたてまつり、聞いて悉く受持するを見る。

又、仏子の定慧具足して無量の喩(たと)えを以て衆の為に法を講じ、欣楽説法して諸の菩薩を化し、魔の兵衆を破して法鼓を撃つを見る。

又、菩薩の寂然宴黙(じゃくねんえんもく)にして天・龍、恭敬(くぎょう)すれどもこれを以て喜びとせざるを見る。

又、菩薩の林に処して光を放ち地獄の苦を済(すく)い仏道に入らしむるを見る。

又、仏子の未(いま)だ嘗(かっ)て睡眠せず、林中に経行(きょうぎょう)し仏道を勤求(ごんぐ)するを見る。

又、戒を具して威儀失くること無く、浄きこと宝珠の如くにして以て仏道を求むるを見る。

又、仏子の 忍辱(にんにく)の力に住して増上慢(ぞうじょうまん)の人の悪罵捶打(おめすいちょう)するを皆悉く能く忍んで以て仏道を求むるを見る。

又、菩薩の諸の戯笑(ぎしょう)、及び痴(おろか)なる眷属を離れ、智者に親近し一心に乱を除き、念を山林に摂め億千万歳、以て仏道を求むるを見る。