従地涌出品第十五

爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく、

当に精進して一心なるべし。我、此の事を説かんと欲す。疑悔(ぎけ)有ること得(う)ることなかれ。仏智は思議し叵し。汝、今、信力を出して忍善(にんぜん)の中に住せよ。昔より未だ聞かざる所の法、今、皆、当に聞くことを得べし。我、今、汝を安慰(あんに)す。疑懼(ぎく)を懐(いだ)くことを得ることなかれ。仏は不実(ふじつ)の語(ことば)無し。智慧、量るべからず。得る所の第一の法は、甚深(じんじん)にして分別し叵し。是の如きを今(いま)当(まさ)に説くべし。汝等一心に聴(き)け。

爾の時に世尊、是の偈を説き已って、弥勒菩薩に告げたまわく、

我、今、此の大衆に於て汝等に宣告(せんこく)す。阿逸多、是の諸の大菩薩摩訶薩の無量無数阿僧祇にして地より涌出せる、汝等昔より未だ見ざる所の者は、我、是の娑婆世界に於て阿耨多羅三藐三菩提を得已(えおわ)って、是の諸の菩薩を教化示導(きょうけじどう)し、其の心を調伏(ちょうぶく)して道の意を発さしめたり。此の諸の菩薩は皆(みな)是の娑婆世界の下(した)、此の界の虚空の中に於て住せり。

諸の経典に於て読誦通利(どくじゅつうり)し思惟分別(しゆいふんべつ)し正憶念(しょうおくねん)せり。阿逸多、是の諸の善男子等は衆に在って多く所説有ることを楽わず。常に静かなる処を楽い、勤行精進して未だ曽て休息(くそく)せず。亦、人・天に依止(えし)して住せず。常に深智(じんち)を楽って障礙(しょうげ)有ること無し。亦、常に諸仏の法を楽い、一心に精進して無上慧を求む。