提婆達多品第十二

時に仙人あり。来って王に白(もう)して言(もう)さく、我、大乗を有(たも)てり。妙法蓮華経と名けたてまつる。若(も)し我に違(たが)わずんば当に為に宣説すべし。

王、仙の言を聞いて歓喜踊躍(かんぎゆやく)し、即(すなわ)ち仙人に随って所須(しょしゅ)を供給し、果(このみ)を採(と)り、水を汲(く)み、薪(たきぎ)を拾い、食を設(もう)け、乃至(ないし)身を以て牀座(じょうざ)と作(な)せしに、身心倦き(しんじんものうき)ことなかりき。時に奉事(ぶじ)すること千歳(せんさい)を経(へ)て、法の為の故に精勤(しょうごん)し給侍(きゅうじ)して、乏(とぼ)しき所なからしめき。

爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく

我、過去の劫(こう)を念(おも)うに大法を求むるをもっての故に、世の国王と作れりと雖(いえど)も五欲(ごよく)の楽(らく)を貪(むさぼ)らざりき。鐘(かね)を椎(つ)いて四方に告ぐ。誰か大法を有(たも)てる者なる。若し我が為に解説(げせつ)せば、身当(みまさ)に奴僕(ぬぼく)と為(な)るべし。