提婆達多品第十二

文殊師利、智積に謂(い)って曰(いわ)く、海に於て教化せること、其の事(じ)此の如し。

爾の時に智積菩薩、偈(げ)を以て讃(ほ)めて曰(のたまわ)く、大智徳(だいちとく)、勇健(ゆうごん)にして無量の衆を化度せり。今、此の諸の大会(だいえ)及び我(われ)皆已(みなすで)に見つ。実相の義を演暢(えんちょう)し、一乗の法を開闡(かいせん)して広く諸の群生(ぐんじょう)を導いて、速(すみや)かに菩提を成ぜしむ。

文殊師利の言わく、我、海中に於て唯(ただ)常に妙法華経を宣説す。

智積菩薩、文殊師利に問うて言わく、此の経は甚深微妙(じんじんみみょう)にして諸経の中の宝、世に希有(けう)なる所なり。もし衆生の勤加精進(ごんかしょうじん)し此の経を修行して、速やかに仏を得るありや不(いな)や。

文殊師利の言わく、有り。娑竭羅龍王(しゃからりゅうおう)の女(むすめ)、年始(としはじ)めて八歳なり。智慧利根(ちえりこん)にして、善く衆生の諸根(しょこん)の行業(ぎょうごう)を知り、陀羅尼(だらに)を得、諸仏の所説、甚深の秘蔵(ひぞう)、悉く能く受持し、深く禅定に入って諸法を了達(りょうだつ)し、刹那(せつな)の頃(あいだ)に於て菩提心を発(おこ)して不退転を得たり。弁才無礙(べんざいむげ)にして、衆生を慈念(じねん)すること猶(な)お赤子(しゃくし)の如し。功徳具足(くどくぐそく)して、心に念(おも)い口に演(の)ぶること微妙広大(みみょうこうだい)なり。慈悲仁譲(じひにんじょう)、志意和雅(しいわげ)にして能く菩提に至れり。