南三北七(なんさんほくしち)と申して仏法十流(じゆうりゆう)にわかれぬ。いわゆる南には三時(じ)・四時・五時、北には五時・半満(はんまん)・四宗・五宗・六宗・二宗の大乗・一音(いつとん)等、各々(おのおの)義を立て辺執(へんしゆう)水火なり。
しかれども大綱(たいこう)は一同なり。いわゆる一代聖教(いちだいしようぎよう)の中には華厳(けごん)経第一、涅槃(ねはん)経第二、法華経第三なり。法華経は阿含(あごん)・般若(はんにや)・浄名(じようみよう)・思益(しやく)等の経々に対すれば、真実なり、了義経(りようぎきよう)・正見(しようけん)なり。
しかりといえども、涅槃経に対すれば、無常教(むじようきよう)・不了義経・邪見(じやけん)の経等云云。
漢より四百余年の末(す)へ五百年に入つて、陳(ちん)・隋(ずい)二代に智顗(ちぎ)と申す小僧(しようそう)一人(にん)あり。後には天台智者(ちしや)大師と号したてまつる。
南北の邪義をやぶりて、一代聖教の中には法華経第一、涅槃経第二、華厳経は第三なり等と云云。これ像法の前(ぜん)五百歳、大集経(だいしつきよう)の読誦多聞堅固(どくじゆたもんけんご)の時にあひあたれり。