問うて云く、竜樹(りゆうじゆ)・世親(せしん)は法華経の実義(じつぎ)をば宣(の)べ給はずや。
答へて云く、宣べ給はず。
問うて云く、何(いか)なる教(おしえ)をかのべ給ひし。
答へて云く、華厳(けごん)・方等(ほうどう)・般若(はんにや)・大日(だいにち)経等の権大乗(ごんだいじよう)・顕密(けんみつ)の諸経をのべさせ給ひて、法華経の法門をば宣(の)べさせ給はず。
問うて云く、何(な)にをもつてこれをしるや。
答えて云く、竜樹(りゆうじゆ)菩薩の所造(しよぞう)の論(ろん)三十万偈(げ)。しかれども尽(つく)して漢土(かんど)・日本にわたらざればその心しりがたしといえども、漢土にわたれる十住毘婆沙論(じゆうじゆうびばしやろん)・中論(ちゆうろん)・大論(だいろん)等をもつて、天竺(てんじく)の論をも比知(ひち)してこれを知るなり。