方便品第二

若し我、衆生に遇(あ)えば尽(ことごと)く教うるに仏道を以てす。無智の者は錯乱(しゃくらん)し迷惑して教を受けず。

我知んぬ。此の衆生は未だ曽て善本を修せず。堅く五欲に著(じゃく)して痴愛(ちあい)の故に悩(なやみ)を生ず。諸欲の因縁を以て三悪道(さんなくどう)に墜墮(ついだ)し、六趣の中に輪廻して備(つぶ)さに諸の苦毒を受く。

受胎(じゅたい)の微形(みぎょう)、世々に常に増長し、薄徳少福(はくとくしょうふく)の人として衆苦に逼迫(ひっぱく)せらる。邪見(じゃけん)の稠林(ちょうりん)、若しは有、若しは無等に入り、此の諸見(しょけん)に依止(えし)して六十二を具足す。

深く虚妄(こもう)の法に著して堅く受けて捨つべからず。我慢にして自ら矜高(ごんこう)し、諂曲(てんごく)にして、心不実なり。千万億劫(せんまんのっこう)に於て仏の名字(みな)を聞かず、亦、正法を聞かず。是の如き人は度し難し。