爾の時に仏、舎利弗に告げたまわく、止(や)みなん止みなん、復説くべからず。若し是の事を説かば、一切世間の諸天及び人、皆、当に驚疑(きょうぎ)すべし。
舎利弗、重ねて仏に白して言さく、世尊、唯(ただ)願わくは之を説きたまえ、唯願わくは之を説きたまえ。所以(ゆえ)は何(いか)ん。是の会の無数百千万億阿僧祇(むしゅにゃくせんまんのくあそうぎ)の衆生は、曽て諸仏を見たてまつり、諸根猛利(しょこんみょうり)にして、智慧明了(ちえみょうりょう)なり。仏の所説を聞きたてまつらば、則ち能く敬信(きょうしん)せん。
爾の時に舎利弗、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言さく
法王無上尊(ほうおうむじょうそん)、唯、説きたまえ。願わくは慮(うらおもい)したもうことなかれ。是の会の無量の衆は、能く敬信すべき者あり
仏復、止みなん舎利弗、若(も)し是の事を説かば、一切世間の天・人・阿修羅、皆、当に驚疑すべし。増上慢(ぞうじょうまん)の比丘は将に大坑(だいきょう)に墜(お)つべし。
爾の時に世尊、重ねて偈を説いて言わく
止みなん止みなん説くべからず。我が法は妙にして思い難し。諸の増上慢の者は、聞いて必ず敬信せじ。
爾の時に舎利弗、重ねて仏に白して言さく、
世尊、唯願わくは之を説きたまえ。唯願わくは之を説きたまえ。今、此の会中の我が如き等(ら)比百千万億なるは、世々に已(すで)に曽て仏に従いたてまつりて化(け)を受けたり。此(かく)の如き人等、必ず能く敬信し、長夜安穏(じょうやあんのん)にして饒益(にょうやく)する所多からん。
爾の時に舎利弗、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言さく
無上両足尊(むじょうりょうそくそん)、願わくは第一の法を説きたまえ。吾(われ)は為(こ)れ仏の長子なり。唯、分別し説くことを垂れたまえ。是の会の無量の衆は、能く此の法を敬信せん。仏、已に曽て世々に是の如き等を教化したまえり。
皆、一心に合掌して仏語を聴受せんと欲す。我等千二百、及び余の仏を求むる者あり。願わくは此の衆の為の故に唯分別し説くことを垂れたまえ。是れ等、此の法を聞きたてまつらば 則ち大歓喜を生ずべし