方便品第二

爾の時に仏、舎利弗に告げたまわく、

今、我が此の衆は、復、枝葉なく、純(もっぱ)ら貞実(じょうじつ)のみあり。舎利弗、是の如き増上慢の人は退くも、亦、佳(よ)し。汝、今、善く聴け。当に汝が為に説くべし。

舎利弗の言さく、唯然世尊、願楽わくは聞きたてまつらんと欲す。

仏、舎利弗に告げたまわく、

是の如き妙法は、諸仏如来、時に乃し之を説きたもう。優曇鉢華(うどんばっけ)の時に一たび現ずるが如きのみ。

舎利弗、汝等(なんだち)、当に信ずべし。仏の所説は言(みこと)、虚妄(こもう)ならず。舎利弗、諸仏の隨宜(ずいぎ)の説法は意趣(いしゅ)解(げ)し難し。所以は何ん。我、無数(むしゅ)の方便・種々の因縁・譬喩・言辞を以て諸法を演説す。是の法は思量分別(しりょうふんべつ)の能く解(げ)する所に非(あら)ず。唯、諸仏のみましまして、乃し能く之を知しめせり。

所以は何ん。諸仏世尊は唯一大事の因縁を以ての故に世に出現したもう。舎利弗、云何なるをか、諸仏世尊は唯一大事の因縁を以ての故に世に出現したもうと名くる。

諸仏世尊は、衆生をして仏知見を開かしめ清浄なることを得せしめんと欲するが故に、世に出現したもう。衆生に仏知見を示さんと欲するが故に、世に出現したもう。衆生をして仏知見を悟らしめんと欲するが故に、世に出現したもう。衆生をして仏知見の道に入らしめんと欲するが故に、世に出現したもう。舎利弗、是れを諸仏は唯一大事の因縁を以ての故に、世に出現したもうとなづく。