法師品第十

爾の時に世尊、重ねて此の義を宣べんと欲して、偈を説いて言わく

諸の懈怠(けだい)を捨(す)てんと欲せば当に此の経を聴くべし。是の経は聞くことを得難(えがた)し。信受する者亦難し。

人の渇(かっ)して水を須(もち)いんとして高原を穿鑿するに、猶お乾燥(かわ)ける土を見ては水を去ること尚お遠しと知る。漸く湿える土泥(どでい)を見ては、決定して水に近づきぬと知らんが如し。

薬王、汝、当に知るべし。

是の如き諸人等、法華経を聞かずんば仏智を去ること甚だ遠し。

若し是の深経(じんきょう)の声聞の法を決了(けつりょう)して是れ諸経の王なるを聞き、聞き已って諦(あきら)かに思惟せん。

当に知るべし。此の人等(ひとら)は仏の智慧に近づきぬ。

若し人、此の経を説かば、如来の室に入り、如来の衣を著、而も如来の座に坐して、衆に処(しょ)して畏(おそ)るる所なく広く為に分別し説くべし。大慈悲を室とし、柔和忍辱を衣とし、諸法の空を座とす。此れに処して為に法を説け。