爾の時に多宝仏、宝塔の中に於て、半座(はんざ)を分(わか)ち釈迦牟尼仏に与えて、是の言をなしたまわく、釈迦牟尼仏、此の座に就(つ)きたもうべし。
即時に釈迦牟尼仏其の塔中(たっちゅう)に入り、其の半座に坐して結跏趺坐したもう。
爾の時に大衆、二如来の七宝塔中の師子座上に在して結跏趺坐したもうを見たてまつり、各(おのおの)是の念をなさく、仏、高遠(こうおん)に坐したまえり。唯、願わくは如来、神通力を以て我が等輩(ともがら)をして倶(とも)に虚空に処(しょ)せしめたまえ。
即時に釈迦牟尼仏、神通力を以て諸の大衆を接(せっ)して皆(みな)虚空に在(お)きたもう。
大音声を以て普く四衆に告げたまわく、誰か能く此の娑婆国土に於て広く妙法華経を説かん。
今、正(まさ)しく是れ時なり。如来久しからずして当に涅槃に入るべし。仏、此の妙法華経を以て付属(ふぞく)して在(あ)ることあらしめんと欲す。