爾の時に長者、即ち是の念を作さく、此の舎、已に大火に焼かる。我及び諸子、若し時に出でずんば必ず焚(や)かれん。我、今、当に方便を設けて、諸子等をして斯の害を免(まぬが)るることを得せしむべし。
父、諸子の先心(せんしん)に各(おのおの)好む所有る種々の珍玩(ちんがん)・奇異(けい)の物(もつ)には情(こころ)必ず楽著(ぎょうじゃく)せんと知って、之に告げて言(のたま)わく、汝等が玩好(がんこう)するところは希有(けう)にして得難(えがた)し。汝、若し取らずんば後に必ず憂悔(うけ)せん。此(かく)の如き種々の羊車(ようしゃ)・鹿車(ろくしゃ)・牛車(ごしゃ)、今、門外(もんげ)にあり。以(もっ)て遊戯(ゆうけ)すべし。汝等、此の火宅より宜(よろ)しく速(すみや)かに出で来(きた)るべし。汝が所欲(しょよく)に隨って、皆当に汝に与(あた)うべし。