譬喩品第三

夜叉競い来り、争い取って之を食す。之を食して既(すで)に飽(あ)きぬれば、悪心(あくしん)転(うた)た熾(さか)んにして、闘諍(とうじょう)の声(こえ)甚だ怖畏(ふい)すべし。

鳩槃荼鬼(くはんだき)、土埵(どだ)に蹲踞(そんきょ)せり。或時(あるとき)は地を離るること、一尺二尺、往返遊行(おうへんゆぎょう)し、縦逸(ほしいまま)に嬉(よろこび)戯(たわむれる)。狗(いぬ)の両足を捉(と)って、撲(う)って声を失わしめ、脚を以て頸(くび)に加えて、狗を怖(おど)して自ら楽しむ。

復、諸鬼有り。其の身長大に裸形黒痩(らぎょうこくしゅ)にして常に其の中に住せり。大悪声(だいあくしょう)を発(はっ)して叫び呼んで食を求む。

復、諸鬼有り。其の咽(のど)鍼(はり)の如し。

復、諸鬼有り。首(あたま)牛頭(ごず)の如し。或(あるい)は人の肉を食(くら)い、或は復狗を噉(くら)う。頭髪蓬乱(ずほつぶらん)し、残害兇険(ざんがいくけん)なり。 飢渇(けかつ)に逼(せ)まられて叫喚馳走(きょうかんちそう)す。

夜叉・餓鬼・諸の悪鳥獣(あくちょうじゅう)、飢え急にして四(しほう)に向(むか)い窓牖(まど)を闚(うかが)い看(み)る。是の如き諸難、恐畏無量(ふいむりょう)なり。